夫ドリルは天井から床まである選択肢を表示してきた!

「こ、こんなに不安の種類があるのか…?!」

選択肢の多さに一瞬あっけにとられてしまったが、ここで冷静さを欠くわけにはいかない。

よし、上から見てみよう。

1.会社にはいつ報告しよう…すぐに報告すればいいんじゃないのか?めでたいことなのに。

2.上司に報告したらなんて言われるだろう…え?上司は喜んでくれるんじゃないのか?

3.妊娠アウティングされたらどうしよう…アウティング?暴露か。どういう意味だ?

4.流産のリスクはないか心配…彩は元気だからこれはなさそうだけど。

5.つわりはいつから始まるのだろう…それは病院で聞けば分かるんじゃないのか?違うのか?

ちょ、ちょっと待て…

産前産後休業給付金?

両親学級?授業参観のことか??

「くそっ!いったいどれが彩の悩みなんだ…」

そのとき、俺は右下に読みにくい字で何か書いてあることに気づいた。

ヒント

ヒントがあるのか!?

使いたくないけれど、間違いたくもない。

俺は完璧じゃななければならない。

「くそっ!」

俺はヒントを押した。

すると、夫ドリルの画面が変わり…

「え?」

「聞いていいのか?それはドリルとしてはどうなんだ…」

すると画面が変わり

夫ドリルとは会話ができるのか!?

いやいや!それより

「聞く…」

俺にとって、分からないことを人に聞くことは抵抗があった。

聞くことは、自分が無知だと言っているようなものだからだ。

そんな俺の考えを察したかのように、夫ドリルはメッセージを表示する

くっ…めちゃくちゃ挑発してくるな。

どういう性格してるんだ、この夫ドリルは…

彩に聞いて、もし

『拓也はそんなことも分からないんだ』

なんて失望されたら…

しかし、また同じことを繰り返すわけにもいかない。

悩んだ末、俺は結論を出した。

「聞くしかない!!」

食事が終わったあと、俺は彩に早速…

き、聞けない…

そもそもなんて聞けばいいんだ!?

安心してくれ!なんて言ったのに、今更どう声をかければいいんだよ。

「くそっ!」

性格が悪いなこの夫ドリル。

いったい誰が作ったんだ。

分かったよ、聞けばいいんだろう、聞けば。

「あ、彩、あのさ…」

「はっ、初めての妊娠の不安って具体的にはどういうことなのか説明してくれるカナ?」

う、うるさい!

「えーと、私は…やっぱり赤ちゃんが無事産まれるかどうかかな。」

「なんだ!そんな心配だったのか!」

「えっ?」

「彩は大きな病気もしたことないし、体も丈夫だよね。年齢もまだ30歳。最近40代で出産した芸能人の話もネットでみたし、職場の人の奥さんも35歳で2人目を産んだって話も聞いた。だから心配しなくても彩なら大丈夫だよ!心配しすぎると体に良くないだろう?そうだ、いい病院をレビューで探して、信頼できるお医者さんに診てもらえればいいよ。俺も調べるし。だから安心して!」

「・・・そうだね、拓也がいるものね」

俺は部屋に戻った。

フッフッフ。不安も分かったし、解決もしたぞ。これで未来がよくなる!

部屋に戻った俺は早速夫ドリルの選択肢から、何の疑いもなく

「無事に産まれるかどうか」

を選んだ。

夫ドリルの画面が赤く…

「え・・・?」

「不正解…そんなハカな!ちゃんと聞いたぞ!?」

ん??

雷のマーク・・・

「またかー!!!!」

夫ドリルにもこの機能があるのね…

答えが変わった?

「ああ、問題が解決したから答えが変わったってことか!?」

答えが全部同じじゃないか。

「夫ドリル、答えを間違えて…」

間違えてない、俺をバカにしてるのか!

「彩は俺が不安を分かってないと感じてるのか!?なんで…」

「え?問題は解決しなきゃいけないだろう。」

解決する権利?

なんだそれは?

解決する権利とやらを、俺は持ってないというのか?

「くっ、ムカつくな…」

「そりゃ当然、信用できる上司とか、尊敬している先輩になら素直に頼るだろう。経験も実績もあるし。」

「解決して欲しいと思える人が権利を持っている人?」

解決されたらイラッとするヤツ?うーん…

「例えば、経験ないくせにできそうな事をいうヤツとか、頼んでもないのに教えようとするヤツ…」

「ちょ、ちょっとまて!彩は俺の頼れるところが好きだと言ってくれてるんだよ。だから俺は解決する権利はあるはずだ!」

「今までは…?」

確かに、なんでも知ってるよね!と言ってくれる。

そう言われて俺はもっと彩にとって頼れる男でいたいと思った。

「うっ」

俺は言葉に窮した。

(ごくり…)

りゅ、流産の確率?

俺は、恐る恐る一つの選択肢を押した。

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