「・・・・・」

第8話 妊婦体験
【後編】

原作:夫婦カウンセラー 下木修一郎
監修:弁護士 森上未紗(愛知県弁護士会所属)
作画:ChatGPT


・・・・いや、驚きすぎて声が出ないだけだ

そのとき、電車がすこし揺れた。

「うおっと!」

慌てて吊り輪を掴む。

筋力がない…腕、細っ!

体験というより、妊婦そのものじゃないか!

んん!?

俺はこれで会社に行くのか?

そうなのか。

時間を戻したり、姿を変えたり・・・

すごいな夫ドリル!

ちょっとワクワクするな、こんな体験普通はできないからな。

俺もこんなとんでもない出来事に対して随分順応できるようになってきたな。

↑注:拓也です

やるぞ!

3日間なんて短いくらいだ!

と思ったのもつかの間

「うわっ!」

途中の駅から大量に乗客が乗り込んできた。

お腹を守るために必死に立ち位置を変えようとするが、周囲の人には気にしてない。

しかも

「妊婦がこの時間に乗るなよ…」

という声がどこからか聞こえてきた。

「何っ!?」

周りを見渡したが、こっちを見ている人間はいない。

誰が言ったか分からない。

くそっ、腹が立つ!

お腹を庇おうとするたびに、何気ない押し合いがこんなにも怖く感じるなんて…

今まで彩は毎日こんな風に気を張っていたのか・・・

前の人生のとき・・・

彩が姙娠中に「通勤が怖い」と言ってたことを急に思い出した。

あのとき俺は確か・・・

「マタニティマークちゃんと付けてる?」

と返しただけだった。

全く分かってなかった。ごめんな、彩。。。

なんとか会社にたどり着いた。

「つかれたな・・・」

コーヒーを飲もうとした瞬間、夫ドリルのウィンドウが現れた。

「そ、そうだ・・・」

もちろん俺が飲んでも問題ないことは分かっている。

けれど、彩の気持ちを理解するためにちゃんと守らないと。

水を飲みながら仕事を続けたが、午後には眠気が襲ってきた。

「お昼すぎは眠いぞ・・・」

帰宅すると、彩が「拓也の好きなケーキ買ってきたよ。一緒に食べよ!」と笑顔で差し出してくれた。

「やった!」

このケーキ、大好物のやつ!彩最高!

しかし、その瞬間また夫ドリルのウィンドウが現れた。

なにーーーー!?

「今日はお腹減ってないから…」

と泣く泣く断った。

彩もこうやって体重コントロールがんばってるのか・・・。

分かってるのと、実際に感じるのは全然違うな。

2日目

そうなのか!なんだか嬉しいな。

「お父さんですよ・・・」

「ん、お母さんか?」

会社についてから気付いたが、朝からずっとお腹の張りと便秘の不快感に悩まされていた。

「マジか…」

水を飲みに行こうと立ちあがると視界がかすみ、足元がふらついた。

「おおっ!?」

「血が薄くなる…そんなことがあるのか…」

にしても、なんだかだるい。

風邪でもひいたのかな・・・

「こんな状態になってしまうこともあるのか。」

会社で9ヶ月過ぎて出勤していた女性はいたが、そんなそぶりも見せてなかったと思う。少なくとも俺は気づかなかった。

妊娠しても働いている女性はすごいぞ・・・。

3日目(最終日)

「そうか!それにしても重いな・・・」

「1.5Lのペットボトルの重さが常にお腹の中にあるのは、純粋にすごい…。」

完全に妊婦のラストスパートを体験する形になった。

お腹が突き出てる!!

足元がほとんど見えない。

無意識に階段を選択したことを後悔した。

ふと、「奏太」が自分の中にいることを想像した。

「本当に危ない。エレベーター使うべきだった…」

仕事中、椅子から立ち上がるたびにお腹の重さが腰に響く。

昼食を買いに行こうと足を見たら、すごくむくんでいる!

「パンパンだ・・・。」

なんとか家に戻り、夜、布団に入ったが、お腹の重さでまともに眠れない。

横向きで寝ていると腕が痺れ、体勢を変えようとするたびに目が覚める。

「ただの重さじゃない。寝返りを打つときも、どこかで 『赤ちゃんを圧迫しないか』 って無意識に考えてしまう。」

しかし、腰が痛い。

朝まで何度も目が覚めてしまう。

「寝たいのに寝れないなんて・・・しんどかったよな、彩。」

そして、朝を迎えた。

次の日

体験モードが解除され、元の体に戻った俺は放心状態だった。

「うん。」

翌朝、会社に行く前に彩に向き合って言った。

「彩、電車が不安になったら時差出勤も考えようね」

彩は一瞬驚いたような顔をしたが、微笑んで「ありがとう」と言ってくれた。

知っているというのは、すごいことだなと改めて思う。

そして、知らないというのは、とても恐ろしいことだとも思った。

そうだ、世の男性みんなに夫ドリルを『強制的に』やってもらった方がいいんじゃないかナ。

僕は、本当にそう思うのサ。

なにか方法はないのかい夫ドリルさん。

「体が軽いいいいいっ♡」

さらに数日後

リビングで本を読んでいた俺に、彩が声をかけた。

「この鍋、片付けてくれると助かるんだけど。」

「・・・うん。後でやっておく。」

軽く答えてそのまま本を読み続けていると、夫ドリルが現れた。

「す、すぐにやります!!」

妊婦体験編・完

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