「ありのままを受け入れる・・・って、なんか抵抗があるけれど…」
時間がない状況で考えるとき、多くは時間を作り出そうとしますね。
「時間を作らないと休息は取れないだろう?」
実は、休息に必要なのは「時間の長さ」ではないのです。
「時間の長さじゃない?」
俺はハッとした。
そうだ、仕事でも同じじゃないか。
大切なのは、質。
だったら、時間も長さではない…
では、質問です。
次のうち、
”より深い夫婦の休息”
を得られるのはどちらでしょう?
「お互い時間を取って、2時間ゆっくりできた方がいいに決まってる。でも...」
でも?
「でも、2時間という長さに縛られるのも、なんだか違うと思うんだ。」
なるほど。
では今、この状況でできることは何でしょう?
俺は昨日の夜のことを思い出していた。
「ごめんなさい・・・」
彩が気を使ってくれたのに、受け入れられず優しく声をかけることもできなかった。
そして今朝の気まずさ。
「たとえ短い時間でも、心が通じ合える瞬間を...大切にする、とか」
そうですね。
理想的な休息時間が取れないからと諦めるのではなく、今この瞬間にできることがあるはずです。
でも、どうしたら質の高い時間になるのか。
相手のことを思い、より良い関係になりたいと悩んでいる。
その気持ちを、たった数分でいいから、懸命に伝える。
そういう選択もあるかもしれませんね。
下手くそでもいいじゃないですか。
どーーーーせ上手に出来ないのだから。
下手くそ・・・!?
ああ、そうだ。
俺は下手くそだ。
上手にやろうとしてもできない。
だったら…
仕事と同じ。
経験がない以上、やるしかない。
では、その気づきを彩さんと共有してみてはどうでしょう?
「え?でも、まだどう言えばいいか・・・」
はーーー、やれやれ。
男性は完璧な答えを求めがち。
ですが、完璧な答えなど夫婦には存在しないのです。
そもそも伝えることができないまま、あなたは前回の人生を終えたのではありませんか?
俺はキッチンに向かった。
逃げそうな気持ちを勢いで封じ込めるように。
「彩...ちょっといいかな」
「え?うん…。」
「何か気づいたっていうか、その・・・考えてたことがあって。今の俺たち、ゆっくりする時間なんてとれない・・・よね」
彩は少し俯いた。
「そうね...」
「でも、それを何とかしようとすると、かえって疲れちゃうのかなって。だから…これは考えただけ?なんだけど…」
俺はしどろもどろになりながらも、言葉を続けた。
「もしかしたら、長い時間じゃなくても、短くても…ちゃんとお互いの気持ちが通じ合える時間があれば、それも大切な休息になるんじゃないかなって。」
彩は…少し驚いた表情をしていた。
そして…
「私も...そう思う。」
「え?」
思わず驚いて声が出てしまった。
「長い時間が取れないことに罪悪感があって...でも、たまに拓也と目が合って微笑み合えた瞬間とか、ほっとするの。」
「そうだったんだ...」
「うん。今みたいに、お互いの気持ちを話せる時間って、私にとってすごく大切なんだなって」
ほら!!
まさに今この瞬間が、お二人にとっての深い時間ではないですか!!
最高じゃないですか!!
ねえったら!!!
私のおかげですよ!?
ねえ!ねえ!もーー!
ねえったらー!
つわり編・完
次回予告
「彩に言うなって言われてたよな・・・」
第3話 妊娠アウティング編