油断していた。

いや、俺だけじゃない。

男は家庭で油断する生き物なんだ。

きっとそうだ、そうに違いない・・・

第5話 妊娠アウティング
【前編】

原作:夫婦カウンセラー 下木修一郎
監修:弁護士 森上未紗(愛知県弁護士会所属)
作画:ChatGPT

3時間前

電話が鳴った。母からだった。

月に1度くらいのペースで母から電話がかかってくる。

正直そんなに電話してこなくてもと思うのだが、父が仕事で母は一人のことが多く、家で寂しくしていると思うとそうも言えない。

「もしもし」

「あ、もしもし拓ちゃん?」

今日は友人の出版記念パーティらしい。

どうやら会場に早く着きすぎたそうだ。

母は昔からせっかちなところがある。

「そうだ母さん、実は赤ちゃんができてさ・・・」

「あら!そうなの!」

母はとても喜んでいた。ずっと孫の顔が見たいと言ってたからな。

「本当におめでとう!お母さん嬉しいわ!」

母はとても興奮しているようだ。

「彩さん、大丈夫? つわりとか大変じゃないの?」

「うん。いろいろ大変みたいなんだ。」

「それは大変よね…お母さんいろいろ協力するから。」

「うん、ありがとう。彩も喜ぶよ。」

そろそろ会場がオープンしそうだと言って、母は電話を切った。

母さんが親として与えてくれたことを、今度は俺がしていく番だ。

あ・・・・


「あれ……妊娠のこと、彩にまだ話すなって言われてたよな……?」

つい嬉しくて、言ってしまった。

背中に嫌な汗が流れる。

でも、きっと分かってくれるだろう、彩だって母が頼れることが分かればきっと安心するだろうし。

大丈夫だよな。

そして夜、俺は彩に母に伝えたことを言った。


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