第6話 妊娠アウティング
【後編】

原作:夫婦カウンセラー 下木修一郎
監修:弁護士 森上未紗(愛知県弁護士会所属)
作画:ChatGPT

会社の昼休みに、母から電話がかかってきた。

なんだ?

「彩さん、大丈夫なの? 心配になっちゃって。何でも言ってちょうだいね。」

彩のつわりがひどいと言ったから、母さん心配しているんだな。

「ありがとう、母さん。彩にも伝えておくよ。」

「近いうちにそっちに行くわね。彩さんの好きなご飯も作ってあげたいし。お母さんに任せて!」

え?え?

うちに来る?飯を作る?

それはまずい、彩に言われたばかりなのに…

なんとかしないと!

「いいよいいよ、ほら、母さんも忙しいだろうから」

母を傷つけないよう、なんとか阻止を・・・

「お母さんは大丈夫よ。じゃ、切るわね。またね。<プツッ。>」

うそだろ・・・

やばいやばい、どうしよう・・・

視界の片隅に、何も喋らない夫ドリルのカウントダウンが表示されている。

夫ドリルの残り時間は10時間を切っている。

母に折り返し電話を!と思っていると、昼休憩終了のチャイムが鳴った。

「しまった!昼からミーティングだ!」

俺は慌ててパソコンを取りに机に戻った。

それから7時間後・・・

俺は、急遽起きたシステムの仕様変更をなんとか完了させた。

2回目の人生とはいえ、いちいち小さな仕様変更まで覚えてないぞ・・・

何も考えることができないまま、もうこんな時間になってしまった。

俺はおそるおそる、夫ドリルのウインドウを見る。

あーーー

残り2時間半って、もう無理だろ・・・

こうやって、家庭のことは後回しになっていくんだな。

タイムリミットが来ると、何か起こるんだろう。

・・・

まさか、人生終了か!?

今、人生終了するわけにはいかない。

どうすればいいか分からないけれど、俺は急いで会社を出た。

とにかく、家に戻るしかない!

確かに、彩の気持ちを考えずに話しちゃったのは俺が悪い。

だけど…

母さんだって、別に悪気があるわけじゃない。

俺たちのためを思って頑張ろうとしてくれている。

なのに、なぜ彩はそんな母さんを拒絶するんだろう。

でも・・・あの彩の表情を見ると、話してもムダな気がする。

「妻のためには、自分の気持ちを押し殺さなければならないんだろうか・・・」

人生終了も嫌だけれど、家に帰るのも気が重い。

「黒猫・・・」

すると、目の前に夫ドリルのウィンドウが!

「お、夫ドリル!!」

だが、そこには選択肢が表示されているだけだった。


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