親が離婚した子どもは不幸なのか?
子どもために離婚できないと考える親
夫婦関係に悩む奥さまからの相談で、離婚したくない理由の一番に「子ども」のことをの事を挙げる方はとても多いです。ご相談者の声をいくつかご紹介します。
「子どもたちから父親を奪っちゃいけないと思うのです」
(思春期の子ども2人の母)
「長男がパパっ子なんです…」
(小学校低学年の子を持つ母)
「子どもの幸せを考えると離婚できません」
(3才の子を持つ母)
離婚をしたら子どもたちが不幸になってしまうかもしれない。子どものことを考え不安になるのは親として自然なことです。
ですが、子どものために離婚しないという選択は、当の本人である『子ども』にとって、本当に幸せなことなのでしょうか。
親の離婚に対しての子どもの反応
流れで親が離婚するかもしれない、と子どもが知ってしまうケースもあります。知ってしまうことで親と話をすることになったとき、子どもの反応はさまざまです。
「絶対絶対離婚しないで!」
14才の女の子を持つ奥さまは、娘さんから絶対に離婚してほしくないと言われたそうです。
もし離婚になると子どもだってものすごく不安です。引っ越し?友達とは?名前も変わる?自分がこれからどうなるの??そう考えれば、離婚してほしくないと言うのも分かります。
子どもさんからそう言われてしまうと、離婚が子どもの幸せを破壊するように感じてしまいます。
それとは逆に、離婚を望む子どもの声もあります。
家庭の中の状態が悪くなっているケースでは子どもが父親を否定するような発言をすることも珍しくありません。
「あんなお父さん要らないし、別に帰ってこなくていいし。」
浮気をして家族に冷たく当たる父親に辟易して、母親にそう伝える16才の女の子。家族をボロボロにしているのは父親だ、問題は父親にある。そう思えば父親を拒絶するのも当然のことでしょう。
親の離婚という、子どもには「どうしようもない」出来事にぶつかったとき、未成熟な子どもたちが考えられる視点は「今このとき」であり、離婚が将来の自分や家族に及ぼす影響まで考えることは簡単なことではありません。
親のことを心から要らないと思っているのでしょうか。子ども自身が自分の本心に気付いていないだけかもしれません。不安定な状態の子どもの言うとおりにすることが、子どもの幸せであるとは限らないのです。
子ども自身もまた迷い、苦しんでいるのではないでしょうか。
かつて親の離婚を経験した、大人になった子どもたちの本音
子どもたちは親の離婚をどのように考えていたのでしょう。実際に、未成熟な子ども時代に離婚を経験し、今は年齢的にも成長した方々の話を聞く機会がありました。
離婚後に離れ離れになった親(別居親)と子どもの面会を支援している「NPO法人ウィーズ」さんが、子どものときに離婚を経験した19才〜36才の7人が、離婚した親に対しての思いを語るイベント「かつての「子ども」に聞く離婚後の親子関係」を開催されました。
そのトークセッションの中で語られた、親の不仲についてどのように感じていたかについてのコメントをご紹介します。
「隠しているつもりでも、親の感情はダダ漏れ。ちょっとした空気の変化も子どもはすぐ察する。より空気を読む人間になる。人より早く精神的に早熟になった。その分愛情表現してくれたらと思う。」(36才女性)
夫婦の不仲を子どもに悟られまいと振る舞っている夫婦は多いと思います。子どもたちに不要な心配をかけさせたくないと考えれば当然のことです。しかし、子どもたちは親が考えるよりも遥かに親の様子に敏感なようです。
「その分愛情表現してくれたら」の部分に、子どもにまで愛情が回らなくなってしまっている様子も伺えます。
「夫婦間の葛藤に子どもを巻き込まないでほしい。自分の傷つきやフラストレーションの解消に、子どもを使わないでほしい。子どもは両親間の葛藤を見てすごく傷が増えていく。」(23才女性)
不仲になると余裕がなくなり、つい子どもに対してあたってしまうという女性からの話は、相談のなかでもたびたび聞かれます。母親も傷ついているのでしょうが、あたられる子どもたちはもっと傷ついてしまうのです。
そして、子どもは親の不仲に対して無力感を感じていることが、次のコメントからも分かります。
「子どもは状況を一方的に押し付けられるだけ。子どもは幼いほど、誰かに助けをもとめる術がありません」(26才女性)
本来子どもの気持ちを受け止めるはずの親自身が不仲になることで、子どものこころを守るという機能を果たせなくなってしまいます。不安定な状態を長く続けることが子どもの成長にも大きな影響を与えるということは容易に想像できます。ですが、当事者である親たちには、そこまでの余裕もなくなってしまうのです。親としての機能不全を起こしているのです。
自分の気持ちを聞いてもらいたかった子どもたち
親が使う「子どものため」という言葉は、本当に子どもの気持ちを考えているのでしょうか。親の不仲に巻き込まれた当事者たちは、このような言葉で当時の辛さを語ってくれました。
「父親のことですが「子どものために」という言葉を殺し文句にふりかざしていたが、ちゃんと子どもの気持ちを聞いてほしかった。」(23才女性)
「もっとわたしの気持ちをしつこいくらいに聞いてほしかった。両親のお互いから悪口を聞いていた。わたしはどちらも好きで、その気持ちを言えなかった。自分の気持ちを聞いてもらうような会話も無かった。」(19才女性)
その当時を振り返った時、子どもである自分たちが、家族の問題から置いてけぼりにされている様子がわかります。自分の大切な家族のピンチなのに、自分たちの幸せを考えてくれない両親。その苦しさを打ち明ける場も無い。子どもたちの辛い思いは、離婚という事柄よりも、子どもである自分を守ってくれない親の余裕のなさから生まれているのです。
もちろん当時は思いつくはずもないことですが、大人になった今だからこそ気付く思いもあります。
「相談できる第三者というものがいたら状況は変わっていたのかな。友達にも共有できなかったし。母親のだだ漏れる感情に子どもは影響を受けてしまう。近所のおばちゃんでもいいので相談できる相手がいたら。」(36才女性)
親の負の影響を浴び続けることから逃げられない苦しみを強く感じます。また、子ども自身では状況を変えることができない非力さ。不仲な夫婦の板挟みにあっている子どもはこんなにも無力なのです。
また、片方の親が子どもの前で、あるいは、子どもに対してひどい物言いをすることもあると思います。これは夫のホンネを知る動画の「ひどい態度の夫への対応方法」でもご説明していますが、毅然とした態度で「私とあなたの問題ですから、子どもに対してああいう物言いはやめてください。」という感じで冷静にピシャリと言った方が良いと思います。子どもの前でひどい態度を取っているという認識を持っていないないこともあります。子どもを守るためにも、しっかりと伝えましょう。
親が離婚した子どもは不幸なのか?
2014年の厚生労働省の発表によると、日本では毎年23万組の夫婦が離婚し、親の離婚を経験する未成年の子どもは約23万人だそうです。
親の離婚を経験した23万人の子どもたちが皆不幸になっているとは、私には思えません。現にこの場で発表してくれた7人の方々は、時間をかけ、親の離婚を受け入れ、幸せな人生を手にしようと懸命に頑張っているよう私には感じられました。
実際にこのようなコメントもありました。
「小2のときに親が離婚。小さいときは離婚してほしくなかったと思っていたが、いまは両親とも幸せそうに暮らしているので、これでよかったんだなと感じている。」(19才女性)
離婚しないに越したことはありません。ですが、離婚することが必ずしも悪いとも思いません。離婚しなければ両親が笑顔になれないこともあるでしょう。
親の不仲を経験したことに対して、このようなコメントもありました。
「仲違いをずっと続けている中で、親が両方必要とはいえない。子どもは『過ごしやすい家庭』がいい。」(21才女性)
両親の不仲により、子どもたちが傷ついていることを親が受け止められないことは大きな問題だと思います。不仲の時間が長ければ長いほど、子どもたちは深く傷ついていく。その後の人生にも大きな影響を及ぼしていくのです。
子どもはお父さんもお母さんも大好きなのです。あなたがどれほどパートナーを憎んだとしても、その思いは変わらないのです。やり直すにしても、離婚するにしても、そのことだけはお互いに忘れずにいて欲しいと感じました。
そして、夫婦の不仲は少しでも短い方がいいということも強く思います。「放っとけばそのうちいつかもとに戻るだろう」「このままでもいいか」と現実から目を逸らしている間にも、子どもたちは親の影響を確実に受けてしまうのです。
子どもの将来を考えた時、子どもたちにとって習い事も大事でしょう。ですが、子どもが親の愛情をいっぱい受けて育つ、ということ以上に大切なことは無いと私は思います。
今あなたが夫婦の問題で悩んでいるとして、もし子どものために離婚できないと苦しんでいるのであれば、それは本当に子どものためなのかを考えてみてください。そして、今このとき、子どもの気持ちを考えられているのかを是非考えて欲しいのです。その余裕が無くなっていると感じたら、子どもは苦しんでいるかもしれません。言葉にはしないけれど、どこにも気持ちを出せずにひとり苦しいんでいるかもしれません。
だからこそ、まずはあなたに心の余裕を持ってもらいたい。あなたが夫婦の問題に対して客観的に考えられないと、子どもに対して愛情を注ぐ余裕など持てないのです。夫婦の問題を客観的に捉えるために、ぜひご相談ください。一緒に子どもの幸せを、そしてあなたの幸せを考えていきたいと思います。
今回、イベント「かつての「子ども」に聞く離婚後の親子関係」を名古屋でライブビューイング形式でを拝見することができました。NPO法人ウィーズ光本様、日本ファミリービジテーションセンター志水様、貴重なお時間をご提供頂きましてありがとうございました。
執筆:下木修一郎(しもきしゅういちろう)
夫婦再生カウンセリング名古屋代表カウンセラー
NPO法人日本結婚教育協会会員
夫の気持ちを知る!夫の気持ち研究家