不妊治療は恥ずかしいこと?
夫婦問題カウンセラーの下木修一郎です。数年前、私たち夫婦は不妊治療を行っていました。妻は子どもを産んだ経験があるので、不妊治療を始めればすぐに結果がでると思っていました。
ですが、なかなかうまくいきません。
生理が来るたび、妻は落ち込んで行きます。
自分の年齢に問題があるんだと、自分を責めるようなことも言うようになりました。
「大丈夫だよ、次はうまくいくよ」
そんなようなことを妻に言ってたように思います。
数回治療を行って、またうまくいかなかったと分かったあるとき、妻が私に言いました。
「とても、痛い。ツライよ…。」
妻に肉体的にも精神的にも大きな負担をかけていたのに、全然気づいてなかった。
言われるまで、その辛さを理解できなかったことが情けなかった。
「ほんとにごめんね、ごめんね。」
不妊治療の辛さを全然理解していなかったことに、ようやく気付くことができました。
正直に言ってくれた妻に、本当に感謝しました。そして私たち夫婦は、不妊治療を止めるという選択をしました。
不妊症は、はずかしいこと・・・
夫婦カウンセラーということもあり、今では不妊のことを話すのも抵抗は無くなりましたが、以前の私は、不妊治療のことを話すなんてできませんでした。
たまに会う友人に子どもはまだなの?と聞かれると「んー難しいかな〜」などと適当にはぐらかしていましたが、同時に身体中の細胞がギュっと潰されるような息苦しさを感じていました。
英カーディフ大学とスイスの製薬会社メルクセローノが世界18カ国の約1万人のカップルを対象に行った調査では、不妊を他の人に相談することに対し、日本人はとても抵抗を持っていることが分かりました。
この不妊への心の壁が、不妊治療の理解の妨げにつながってるのではないかと思います。
男性不妊症って知っていますか?
少し前ですが、NHKハートネットTV「男性不妊症 患者たちはいま」で、男性にも不妊症があり、その治療が可能であるという放送がありました。
不妊症は、長い間女性の側に問題があると思われてきましたが、現在では不妊症の原因のおよそ半分は男性にあると言われています。
その番組の中で、山口大学医学部附属病の白石晃司医師は「男性不妊症の6割から7割は原因が分かっていて、手術や薬で治る病気も結構ある」と語っていました。
「もっと早く… 男性不妊(治療)もあるという話を知っていたら、早く妊娠できたのになという気持ちがあります。」
子どもが出来ないことに長年悩み続けて来た男性が、番組の中で語った言葉。不妊治療の正しい情報と知識が必要であることを教えてくれています。
不妊は女性だけの問題ではないということを、一人でも多くの男性に知って頂きたい。「そんなこと知らなかったよ…」と、後悔して欲しくない。
私はひとりの男として、妻を愛する夫として、夫婦カウンセラーとして、これからも不妊症の正しい理解を広めるために、多くの方々に伝えていきたいと思います。
あなたの「シェア」で、うまれる命がある。
とはいえ、この話題はまだまだハードルが高く、シェアすることも勇気がいるかもしれません。
不妊治療している人は、やはり抵抗があると思いますし、結婚してない人が不妊症を語るのは変だと思われるかもしれません。
それでも、多くの人が不妊治療の正しい知識を持つことで、新しくうまれる命もあると思うのです。みなさんの共感で新しい命が生まれるかもしれないと思うと、インターネットって素晴らしいと今更思いました。
そして最後に。
不妊症に悩む皆さん、子どもが欲しいという気持ちはとてもよく分かります。ただ、子どもを生む事が目的になってしまい、お互いの苦しみに鈍感になってしまうこともあります。だから辛いときには、辛いと言ってあげてください。
「なんで分かってくれないの!?」
ではなくって
「つらいの・・・」
と気持ちを素直に伝えましょう!
執筆:下木修一郎(しもきしゅういちろう)
夫婦再生カウンセリング名古屋代表カウンセラー
NPO法人日本結婚教育協会会員
夫の気持ちを知る!夫の気持ち研究家
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